LTV(Lifetime Value)は、1人のプレイヤーが「卒業」するまでに生み出す収益の合計予測値。広告費にいくらまで突っ込めるかの上限を決める、マーケティング判断の出発点となる数字です。LTV > CAC(獲得コスト)が広告投資が回る最低条件で、LTV を 1 ドル上げることは広告予算を 1 ドル増やすのと同じ効果を持ちます。
なぜLTVが重要か
Marsh
LTV ってマーケ会議でよく聞くんですけど、結局なんで大事なんですか?
Mallow
広告費の上限を決めるから。LTVが$5なら、1人取るのに$5以上払うと赤字。$3で取れる広告だけ買えば黒字。LTV > CAC が広告投資の最低条件。LTVがわからないと、いくら払っていいかわからない。
Mallow
簡易版は ARPDAU × 平均生存日数。ARPDAUが$0.10で、平均30日プレイしてくれるなら LTV = $3。本当はリテンション曲線を時間積分して出すんだけど、その近似でだいたい使える。
Marsh
最初は実測データ無いですよね。どうするんですか?
Mallow
最初は D30累計売上 を仮置きの LTV にする。実測で30日後の1人あたり累計売上が出れば、その時点の確定値として扱える。それを D60、D90 と更新していって精度を上げる。「初期予測 → 実測補正」の段階運用。
Marsh
LTV と CAC の比率って、「3 倍」って聞きますけど、なんで 3 倍なんですか?
Mallow
サーバー費・人件費・Roblox の手数料を引いた粗利率がだいたい 1/3、というのが SaaS / モバイルゲームの経験則。LTV $3、CAC $1 でようやく事業として持続可能。LTV/CAC = 1 倍だと売上 = 広告費で利益が出ない。3 倍は「儲かる」の境界線。
Marsh
Robloxの場合、LTV の目安ってどれくらいですか?
Mallow
ジャンル次第で $0.50〜$10、トップタイトルは $20 超。ブランド体験ワールドは LTV が低めに出やすい(直接マネタイズしないため)が、そもそも事業目標が「ブランドリフト」なら LTV ではなく接触数で評価する判断もあり得る。
計算式とベンチマーク
LTV(簡易) = ARPDAU × 平均生存日数
LTV(精密) = ∫₀∞ ARPDAU(t) × Retention(t) dt
LTV/CAC 比: 3 倍以上が事業として持続可能
- $0.50 以下: マネタイズが弱い or 平均生存日数が短い(広告投資はほぼ不可能)
- $1〜$3: Roblox の中央値帯(ジャンル平均レベル)
- $5〜$10: 良好(強いリテンション + 課金設計)
- $20 超: 上位タイトル(コアファン層が厚く、長期生存する設計)
具体的な数字で考える
Marsh
ARPDAU が $0.10、平均生存日数が 30 日のエクスペリエンスがあります。LTV はいくらですか?
Mallow
$0.10 × 30 = $3。LTV/CAC = 3 倍を取るには、CAC を $1 以下に抑える必要がある。Sponsored Ads で $1 は Roblox では比較的取れる単価。広告投資が回る可能性はある。
Marsh
これを D30 リテンションを上げて、平均生存日数を 60 日にできたら?
Mallow
$0.10 × 60 = $6。LTV が倍。同じ CAC $1 なら LTV/CAC は 6 倍。広告予算を倍に増やしても黒字が維持できる。D30 を上げることが広告予算を増やすのと同義になる。
Marsh
ARPDAU を上げる vs 生存日数を上げる、どっちが効きやすいですか?
Mallow
局面次第。ARPDAU $0.03 のような低い状態なら、まず ARPDAU を中央値まで引き上げる方が早い。すでに ARPDAU が中央値帯なら、生存日数を伸ばす(D30 改善)方が伸びしろが大きい。ボトルネックの方を見つけるのが先。
ロブロックスでの読み方
Roblox Creator Hub の「Analytics」タブには LTV 単独の表示はありません。「期間累計売上」と「期間内のユニーク新規ユーザー」を組み合わせて自分で計算します。実務的には、コホート別に「D30 までの累計売上 ÷ D0 ユーザー数」を出して D30 LTV とし、D60 / D90 と段階的に精度を上げていきます。Robux ベースで集計したものを米ドル換算する際は、消費者支払ベース(1 R$ ≒ $0.0125)と DevEx 換算(1 R$ ≒ $0.0035)を取り違えないように注意します。広告投資判断で使う LTV は通常消費者支払ベースではなく実際に手元に入る DevEx ベースで見るのが安全です。
よくある誤解
- 「LTV は固定値ではない」: 流入チャネル・コホート・時期で全く違う。「平均 LTV」だけで判断すると、特定セグメントで赤字を垂れ流すことがある
- LTV = 売上ベース、CAC = 広告費ベースで揃える: LTV を粗利ベースに直すと数字が変わる。比較するときは前提を統一する
- 初期 LTV は希望的観測になりがち: ローンチ直後の少数コアファンは LTV を過大評価する。30 日以上のデータが溜まるまで広告投資は控えめに
関連する指標
- CAC(Customer Acquisition Cost): 1人取るコスト。LTV/CAC比率が3倍以上が一般的な目標
- ARPDAU: LTV計算の入力値
- Day 30 Retention: 生存日数の基礎データ
- Cohort Analysis: コホート別 LTV を出すと、流入チャネル別の良し悪しが見える
- K-factor: バイラル分を加味すると実質 LTV は底上げされる