Cohort Analysis(コホート分析)は、同じ時期に新規流入したユーザー群を「同じコホート」として時系列で追いかける手法。アップデートや広告施策の前後でユーザーの定着がどう変わったかを切り分けて見るための、分析の基本フレームです。全体平均だけでは「施策の効果」と「流入の質の変化」が混ざってしまうため、コホートで切り出すことで因果が見えるようになります。
なぜコホートで見るのか
Marsh
コホート分析って、聞いたことはあるんですけど、何で普通のリテンション分析と違うんですか?
Mallow
時期の影響を切り分けられる。たとえば「先月のD7が下がった」とき、それが アップデートのせいなのか その時期の流入が広告経由で質が低かったからなのか、全体平均だとわからない。コホートで切ると、同じ時期に来た人同士で比べられるから、施策の効果が見える。
Mallow
普通は「初訪問週」か「初訪問月」。たとえば「2026年1月第1週に初訪問したコホート」を一つの単位として、その人たちの D1、D7、D30 を追いかける。表にすると縦軸=コホート、横軸=経過日数、セル=リテンションの三角表になる。
Marsh
表でいうと、どこを見たらいいんですか?
Mallow
同じ「経過日数」の列を縦に比較する。たとえばアップデート後のコホートのD7が、アップデート前のコホートのD7より高ければ効いている。逆に流入チャネルの効果を見たいなら、行ごとに「広告コホート vs オーガニックコホート」を別表で出す。切り口は何でも作れるのが強み。
Marsh
どれくらいの母数があれば「比較できる」と言えるんですか?
Mallow
経験則で 1コホート最低 500 人、できれば 1,000 人以上。それ以下だと数字のブレが大きくて施策の効果と区別がつかなくなる。母数が足りなければ「週次」を「月次」に粒度を粗くする。
Marsh
Robloxの場合、ジャンルや時期の影響も大きそうですよね。
Mallow
大きい。夏休み・冬休みコホートは普段より D7 が高くなる傾向。学期中コホートと比較するときは時期を揃えるか、季節要因として注釈をつける。「コホート同士で公平に比較できるか」を毎回確認するのが分析者の責任。
計算式とベンチマーク
典型的なコホート表(D0 を100%として)
コホート | D0 | D1 | D7 | D14 | D30
1月第1週 | 100% | 35% | 12% | 8% | 4%
1月第2週 | 100% | 38% | 14% | 9% | 5%
1月第3週 | 100% | 42% | 16% | 11% | —
1月第4週 | 100% | 45% | — | — | —
- 最小コホート規模: 500 人(できれば 1,000 人)以上で安定
- D7 を縦比較: 施策・アップデート効果の最短検証ポイント
- D30 を縦比較: LTV 改善が効いているかの検証ポイント
- 典型分析期間: 4〜8 コホート(4〜8 週分)を並べて傾向を見る
具体的な数字で考える
Marsh
6月にチュートリアルを大幅改善したとします。7月のコホートを6月のコホートと比較したら、D7 が 12% → 18% に上がっていました。これって、改善が効いた、で確定ですか?
Mallow
いや、まだ早い。6月と7月で流入チャネルの構成が違う可能性を消す必要がある。たとえば 7月に TikTok 動画がバズって若年層が増えたなら、その層は元々 D7 が高いから、チュートリアルの効果じゃない可能性がある。
Mallow
流入チャネル別にコホートをさらに切る。「6月オーガニック vs 7月オーガニック」「6月広告 vs 7月広告」のように同チャネル内で比較する。それでも 18% なら、チュートリアル改善の効果と言える。
Marsh
LTV にもコホート分析って使えるんですか?
Mallow
使える。コホート別 LTV を出すと、「6月コホートの D30 累計売上 $1.20、7月コホートは $1.80」のような形で、流入の質が時期でどう変わったかが見える。広告投資の予算配分を、月単位で見直すときの根拠になる。
ロブロックスでの読み方
Roblox Creator Hub の「Analytics」タブ自体には完全なコホート表はありませんが、「New Users」と「Retention」のグラフを期間指定で並べることでコホート的な見方は可能です。本格的なコホート分析には外部ツール(RoMonitor、PlayFab、または Roblox の Open Cloud API で取得したデータを BigQuery / Looker Studio に取り込む構成)が現実的です。広告経由の流入を切り分けるには、Sponsored Ads の Campaign 経由のセッションを別途タグ付けして集計します。
よくある誤解
- 「コホート分析 = リテンション分析」ではない: コホート分析は切り口の手法。リテンションだけでなく ARPDAU、Session Length、Conversion Rate も全てコホート単位で見られる
- 小さすぎるコホートは雑音: 100 人のコホートで D7 が 10% → 15% に上がっても、ブレの範囲内。最低 500 人を確保する
- 時期の偏りを無視しない: 学期中・休暇中・新コンテンツ投入直後はリテンションが構造的にずれる。コホート同士の「公平性」を毎回確認する
関連する指標
- Day 1 / 7 / 30 Retention: コホート表のセル値そのもの
- LTV: コホート別 LTV を出すと「どの月の流入が質が良かったか」が見える
- Churn Rate: コホート単位の Churn を出すと、施策の「離脱抑止効果」が見える
- A/Bテスト: AB グループそれぞれをコホートとして比較する考え方は同じ
- 流入チャネル別分析: コホートをさらにチャネルで切ると、施策の純粋効果が見える