Roblox がクロスゲーム追跡を終わらせる — Scoped User Identifiers が自社のプレイヤーデータに与える影響

Roblox が Scoped User Identifiers(スコープ付きユーザーID)を導入します。プライバシーの変更ですが、データ面の影響は深い。現在は全プレイヤーが Roblox 全体で共通の1つのグローバル UserId を持ちますが、新方式では各エクスペリエンスでプレイヤーに別々のIDが割り当てられ、同じ人物を無関係なゲーム間で勝手に追跡できなくなります。新規プレイヤーはスコープIDを受け取り、既存(再訪)プレイヤーはグローバル UserId を維持。2026年10月にかけて段階導入されます。企業の Roblox ゲームを運営するチーム向けに、何が壊れるか・新 Player.User API・タイトル横断の同定がどう「同意ベース」になるかを Mallow と Marsh が翻訳します。

Roblox がクロスゲーム追跡を終わらせる — Scoped User Identifiers が自社のプレイヤーデータに与える影響
この記事のまとめ
  • Scoped User Identifiers は各プレイヤーにエクスペリエンスごとの一意なユーザーIDを与え、クロスゲーム追跡を防ぐ。新規ユーザーはスコープID、既存(再訪)プレイヤーは従来のグローバル UserId を維持(Open Cloud は引き続きサポート)
  • 同定は新 Player.User プロパティで取得 — スコープ付きユーザーID+domain type+domain ID を持つ User オブジェクト。数値 userId を取っていたエンジン API は数値でも User でも受け付ける(数値は自動でラップ)
  • 段階導入: 現在 Studio で早期テスト → 2026年7月初旬 Configs API でオプトイン登録 → 8月 Open Cloud 更新+User Account Linking API → 10月 全ゲームへ広範ロールアウト
  • 運営チームのアクション: 新規プレイヤー向けの DataStore 移行を計画/UserId を渡す外部ツール・CRM を全棚卸し/タイトル横断の同定は同意ベースの Account Linking API へ/BAN は共有BAN維持が予定されている Roblox のBANシステムに残す

登場人物

Mallow
SENIOR CONSULTANT · 13Y

ZehnStudio26 のシニアコンサルタント。Roblox 黎明期から関わっている古株。難しい話を噛み砕くのが得意。

Marsh
ロブロックスゲーム担当マーケター · 読者代表

企業の Roblox ゲームを担当するマーケター。マーケティングは得意だが Roblox 特有の仕組みはまだ勉強中。専門用語が出るたびに読者に代わって「それ何?」と聞いてくれる、読者の代弁者。

Marsh
Mallow、週次レポートで「Scoped User Identifiers」を見ました。プライバシー機能っぽいですが、うちのプレイヤーの同定方法に影響します?
Mallow
する — かなり。今は Roblox の全プレイヤーが、どのエクスペリエンスでも同じ 1つのグローバル UserId を持っている。Roblox はこれを スコープ付き(ゲームごとの)ユーザーID にする。同じ人物でもエクスペリエンスごとに 別の IDになる。狙いは、プレイヤーが無関係なゲーム間で追跡されるのを止めること。
Marsh
なぜ Roblox はクロスゲーム追跡を止めたいんですか?
Mallow
プライバシー。1つのグローバルIDがあると、誰でもプレイヤーの行動を全く別のゲーム間で突き合わせ、プロフィールを作れてしまう。IDをゲームごとにスコープすれば、あなたのゲームは 自ゲーム内で 再訪プレイヤーを認識できるが、その同一性を外の世界の「その人」とこっそり紐づけることは誰にもできなくなる。年齢別アカウントや経済の透明化と同じ、プライバシー成熟の流れ。
Marsh
これ、うちの既存プレイヤーデータを壊しますか? 進行状況を UserId キーで保存しているんですが。
Mallow
ここが肝心。グローバル UserId は 再訪プレイヤーには維持される — 過去にゲームを訪れたことのある人は皆グローバルIDを保持し、Open Cloud も引き続きサポートする。スコープIDをもらうのは新規ユーザーだけ。 だから UserId キーの既存 DataStore は、今いるプレイヤーには動き続ける。ただし新規プレイヤーはスコープIDで来るので、旧グローバルID前提で組んだストアは彼らを認識できない。新規プレイヤー向けの移行計画が要る。
Marsh
新しいIDはコードでどう読むんですか?
Mallow
新しい Player.User プロパティがある。これは User オブジェクト を返し、スコープ付きユーザーID+domain typedomain ID を一緒に持つ — 同一性の文脈が常にIDと一緒に運ばれる。そして数値 userId を取っていたエンジン API — 例えば MarketplaceService:UserOwnsGamePassAsync — は、数値でも User でも受け付けるようになった。数値を渡せば内部で自動的に User にラップされるので、既存スクリプトの多くはそのまま動く。
Marsh
タイムラインは? いつ動けばいい?
Mallow
段階的だから猶予はある。現在: Studio で早期テスト — Player.User を試せる。2026年7月初旬: Configs API でオプトイン登録。8月: Open Cloud 更新+User Account Linking API10月: 全ゲームへ広範ロールアウト。時計は動き出したが、当日中の大慌ては不要。
Marsh
うちは会社で3本ゲームを運営していて、ゲーム1のプレイヤーがゲーム2もやっていると分かるのが嬉しいんです — クロスプロモに使うので。スコープ化でそれは死にますか?
Mallow
そこが事業上の核心。デフォルトでは、スコープIDによって 自社タイトル間でプレイヤーをこっそり紐づけることはできなくなる。でも Roblox はまさにこのために 8月に User Account Linking API を出す: プレイヤーの同意のもとで 自社ゲーム間の同一性を解決できる。プレイヤーには許可を求めるプロンプトが出る。つまり同一性ベースのクロスプロモは、自動ではなく 同意ベース になる。
Marsh
UserId を流し込んでいる分析ツールや外部 CRM は?
Mallow
新規プレイヤーについては スコープID(そのゲーム限定) を受け取る。グローバル UserId がゲーム間で安定している前提だった外部ダッシュボード・アトリビューション・CRM は、連携の更新が必要。実務ステップ: 今 UserId を書き出している箇所を全部棚卸しして、「10月以降もこれは想定どおりの意味を持つか?」を問う。
Marsh
BAN はどうなります? うちは複数ゲームで共有BANリストを使って常習者を弾いてます。
Mallow
Roblox は Ban API の強化を検討しており、10月(フルロールアウト)より前に展開する と言っている — 自社ゲーム間の共有BAN機能を維持するため。安全策は、自前の UserId ブロックリストではなく Roblox 自身のBANシステム にモデレーションを残すこと — そうすれば、IDがスコープ化したときに壊れるものを保守するのではなく、Roblox が出すものをそのまま継承できる。
Marsh
なぜエンジニアだけでなく、マーケターも気にすべきなんですか?
Mallow
オーディエンスについて 何を知ってよいか を作り替えるから。プレイヤー単位の同定、タイトル横断のアトリビューション、リターゲ、ポートフォリオ全体での LTV 追跡 — その全部が「グローバルIDで自動」から「Account Linking で同意ベース」へ移る。もし測定計画が「運営する全ゲームで1人を追える」とこっそり前提しているなら、その前提は失効する。今すぐデータチームに共有し、同意ベースの同一性を前提に設計を。
Marsh
まとめると?
Mallow
(1) Roblox はクロスゲーム追跡を止めるため、ゲームごとのスコープIDへ移行。新規ユーザーはスコープID、再訪ユーザーはグローバル UserId を維持(Open Cloud 継続サポート)。(2) 同定は Player.User(スコープID+domain 文脈を持つ User オブジェクト)で取得、エンジン API は数値でも User でも可。(3) タイムライン: 現在テスト → 7月オプトイン → 8月 Open Cloud+Account Linking → 10月 広範ロールアウト。(4) アクション: 新規プレイヤーの DataStore 移行を計画/UserId を使う外部ツールを全棚卸し/タイトル横断の同定は同意ベースの Account Linking API へ/BAN は Roblox のシステムに残す。
Marsh
つまりプレイヤーのプライバシーが上がり、うちは「デフォルトで追跡」から「許可をもらって紐づける」へ移る、と。データチームの仕事は増えるけど、方向性としては正しいですね。

よくある質問

Scoped User Identifiers は既存の DataStore を壊しますか?
再訪プレイヤーについては壊しません。グローバル UserId は過去にゲームを訪れたことのある人には維持され、Open Cloud も引き続きサポートするため、UserId キーの DataStore は既存プレイヤーには動き続けます。スコープIDを受け取るのは新規プレイヤーだけなので、新規プレイヤーの保存・同定方法について移行計画が必要です。
プレイヤーの同定は今後どう読みますか?
新しい Player.User プロパティを使います。これはスコープ付きユーザーID+domain type+domain ID を持つ User オブジェクトを返します。以前は数値ユーザーIDを取っていたエンジン API(例: MarketplaceService:UserOwnsGamePassAsync)は、数値でも User でも受け付け、数値は内部で自動的に User にラップされます。
会社で運営する複数ゲーム間でプレイヤーを紐づけられますか?
こっそりとはできません。デフォルトではスコープIDがクロスゲーム同定を防ぎます。Roblox は 2026年8月に User Account Linking API を出し、プレイヤーの同意のもとで自社ゲーム間の同一性を解決できるようにします(プレイヤーには許可を求めるプロンプトが出ます)。タイトル横断のクロスプロモやアトリビューションは、自動ではなく同意ベースになります。
ロールアウトのタイムラインは?
現在 Studio で早期テスト(Player.User 利用可)、2026年7月初旬に Configs API でオプトイン登録、8月に Open Cloud 更新と User Account Linking API、10月に全ゲームへの広範ロールアウトです。

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