- Project A はリリース時、手順解説型チュートリアル(ステップ1, 2, 3で操作を教える)を採用していた
- ジャンル慣習がない独自コアループのゲームでは、手順を教える前に「何のゲームか」を伝えないと離脱が止まらない
- コンセプト型に作り替えたところ、新規プレイヤーの5分後生存率が +28%、平均セッション時間が +50% 改善した
- チュートリアルには5つのタイプ(手順型・コンセプト型・文脈型・環境型・救済型)がある。ゲームの性質で使い分ける
登場人物
ZehnStudio26 のシニアコンサルタント。Roblox 黎明期から関わっている古株。データの裏側を読み解くのが得意。
あるブランド企業のマーケター。Roblox は最近気になり始めたばかり。専門用語が出るたびに「それ何?」と聞いてくれる、読者の代弁者。
解説 — なぜ「種類を変える」だけで序盤離脱が動いたのか
「とりあえずチュートリアル」が逆効果になることがある
ゲーム開発で「最初にチュートリアルを入れるのは親切」という発想は基本的に正しい。ただ Project A のケースは、少し違う角度の教訓を残しました。チュートリアルの種類を間違えると、入れたほうが離脱が増える。手順を順番に丁寧に見せる形式は、本来プレイヤーを助けるためのものです。にもかかわらず、独自コアループのゲームでは、それが逆に「何のゲームか分からないまま操作だけ流れてくる」状況を作り出し、離脱を加速させていました。
Project A で起きていたこと
Project A はリリース時、典型的な手順解説型チュートリアルを採用していました。ステップ1: 移動する、ステップ2: アイテムを取る、ステップ3: ゴールへ向かう — という形式です。
ところがデータを見ると、新規プレイヤーの5分後生存率は 24.5%。30秒で約13%、1分で約30%、3分で約65%が消えていました。1〜3分のあいだに大半のプレイヤーが離脱している、という典型的な「序盤離脱型」のカーブです。
なぜ手順型が効かなかったのか
オブビーやTYCOONのようにジャンル慣習が確立しているゲームでは、プレイヤーは初見でも「障害物を避けてゴールへ」「設備を建てて稼ぐ」というコアの目的を知っています。手順型はその「やりたいことは分かっている、操作だけ知りたい」状態に最適化された形式です。
ところが Project A は、ジャンル慣習が存在しない独自コアループのゲームでした。プレイヤーが「何のゲームか」を理解する前に、操作の手順だけが順番に提示される。料理の名前が伝わらないまま「鍋に油をひいて、玉ねぎを切って」と作業手順だけ流れてくるのに近い状態だったのです。
コンセプト型に作り替える
そこで、チュートリアルの組み立て自体を変えました。最初の30秒〜1分は「これは何のゲームで、何が目的で、何をすると勝つのか」をコンセプトとして明示する設計に切り替え、操作の手順はプレイヤーがコアループを理解した後に、必要なタイミングで小さく出す形へ並べ替えました。
結果として、5分後生存率は 24.5% → 31.3%(+28%)、平均セッション時間は 5.0分 → 7.5分(+50%) に動きました。特に効いたのは1分以降の区間で、3分後生存率も +22% 改善しています。プレイヤーが「自分が何をしているゲームか」を早期に理解できるようになり、最初の数分を耐えやすくなったと読めます。
Project A から持ち帰れる3つの教訓
このケースから他タイトルにも適用できる実務的な学びを整理すると、次の3点になります。
1. ジャンル慣習があるかをまず判定する。慣習があるゲーム(オブビー、TYCOON、シューターなど既知ジャンル)なら手順型で十分機能する。慣習が無い独自コアループなら、コンセプト型を最初に置く。
2. 「何のゲームか」が最初の30秒〜1分で伝わっているか、必ず実機で確認する。開発者は当然知っている前提を置きがちで、ここを見落としやすい。初見プレイヤーに実際に触ってもらい、最初の1分で何のゲームかを言語化できるかをテストする。
3. 改善効果は「5分後生存率」と「平均セッション時間」の2軸で読む。両方が同方向に動いていれば、コンテンツ側の改善と判断できる。片方だけだと外的要因(広告流入の質など)の影響を受けている可能性が残る。


