2025年12月、Robloxから開発者向けの重要なアップデートが多数発表されました。本記事では、クリエイターの皆さんが押さえておくべき最新情報を詳しく解説します。
開発ツール・APIの大幅強化
今月は開発者の生産性を向上させる新機能が多数リリースされました。それぞれの機能を詳しく見ていきましょう。
HttpService監視ダッシュボード
外部APIとの通信状況を可視化する新しいダッシュボードが登場しました。Creator Dashboardから「Monitoring」→「Http Service」でアクセスできます。
確認できるメトリクス:
- リクエスト数:エクスペリエンスからのHttpServiceリクエスト総数を時系列で追跡
- 応答時間:各エンドポイントのレスポンスにかかった時間(レイテンシ)を測定
フィルタリング機能:
- プレイス別:特定のプレイスに限定してメトリクスを表示
- リクエストタイプ別:GET、POSTなどHTTPメソッド別にパフォーマンス分析
- ステータス別:200、404、500などレスポンスステータスでエラーを迅速に検出
外部APIを利用しているエクスペリエンスでは、どのエンドポイントがボトルネックになっているか、エラーが頻発している箇所はどこかを素早く特定できるようになります。今後はHTTPドメイン別の詳細分析機能も追加予定とのことです。
StudioTestService:プラグインからのテスト自動化
プラグイン開発者向けの新サービス「StudioTestService」が公開されました。このサービスを使うことで、プラグインからStudioのプレイテスト機能を自動化・カスタマイズできるようになります。
主要な4つのメソッド:
| メソッド | 説明 |
|---|---|
ExecutePlayModeAsync() |
ソロプレイモードでテストセッションを開始。引数を渡すことも可能 |
ExecuteRunModeAsync() |
ランモードでテストセッションを開始 |
GetTestArgs() |
ExecuteAsync系メソッドに渡された引数を取得 |
EndTest(result) |
現在のテストセッションを終了し、結果を呼び出し元に返す |
動作フロー:
- プラグインがテスト引数を送信してテストを開始
- ゲーム内スクリプトが
GetTestArgs()で引数を受け取る - テスト完了時に
EndTest()で結果を返却 - プラグインが結果を受け取り、次の処理を継続
実用的なユースケース:
- テスト場所キャッシング:よくテストする位置を保存し、ワンクリックでその場所からテスト開始
- シナリオプリセット:NPCのスポーン位置や初期状態を事前設定し、テスト準備時間を短縮
- 自動チューニング:車両物理(A-chassisなど)のパラメータ調整を自動化
プラグインとゲームスクリプト間で引数のやり取りができるため、従来は手動で行っていたテスト作業を大幅に自動化できます。
ReflectionService:エンジンAPI情報へのプログラムアクセス
RobloxエンジンのAPIサーフェスをプログラムから検査できる新サービス「ReflectionService」が登場しました。プラグイン開発やメタプログラミングに強力な機能を提供します。
主要な3つのメソッド:
| メソッド | 説明 |
|---|---|
GetClass(className, filter) |
特定のクラス(Part、MeshPartなど)の階層構造とアクセス権限情報を取得 |
GetClasses(filter) |
現在のセキュリティコンテキストでアクセス可能な全クラス情報を返却 |
GetPropertiesOfClass(className, filter) |
指定クラスの全プロパティ情報(データ型、シリアライゼーション状態、セキュリティレベル)を取得 |
セキュリティ機能:
SecurityCapabilitiesという値でアクセス権限をフィルタリングできます。スクリプトの実行コンテキスト(プラグイン、モジュールスクリプトなど)に応じて出力が自動的に制限されます。
活用例:
- APIインスペクションプラグイン:新しいAPIリリースを自動分析
- インスタンスクラス変更プラグイン:利用可能なクラスを動的に取得
- ドキュメント生成ツール:現在のエンジンAPIから自動でドキュメント生成
現在の制限事項:
- イベントとメソッド情報は未実装
- タグ(Hidden等)情報は未対応
Open Cloud API拡張:Developer ProductsとGame Passes管理
外部からRobloxリソースを操作できるOpen Cloud APIに、Developer ProductsとGame Passesの管理機能が追加されました。
新しいエンドポイントでできること:
- Create:新しいDeveloper ProductやGame Passを作成
- Fetch:既存の製品情報を取得
- Update:価格、名前、説明などを更新
- List by Universe:特定のエクスペリエンスに紐づく全製品を一覧取得
認証方式:
現在はAPIキー認証のみをサポートしています。
実用的なユースケース:
- 複数エクスペリエンスの価格を一括変更
- 外部管理ツールとの連携
- CI/CDパイプラインでの自動デプロイ
- 割引キャンペーンの自動管理
従来のレガシーAPIと比較してコードがシンプルになり、より高度な実装が可能になると開発者から評価されています。
公式ドキュメント:
ゲーム開発の新機能
SLIM(Scalable Lightweight Interactive Models):次世代LoD技術
SLIMは、遠距離にあるオブジェクトの視覚品質を大幅に向上させる新しいレベルオブディテール(LoD)システムです。PC/Macのクライアントベータとして利用可能になりました。
SLIMの仕組み:
SLIMは2つの主要技術で軽量表現を生成します:
-
コンポジティング(複合化)
- 複数のパーツを統合して最適化
- 例:112個のメッシュと24個のテクスチャで構成された車が、1つのメッシュと4つのテクスチャに最適化
- 非表示の内部ジオメトリを自動削除
- 描画呼び出し(Draw Call)を大幅削減
-
レベルオブディテール(LoD)
- 複数の詳細度レベルを自動生成
- 低解像度テクスチャとポリゴン削減メッシュを作成
- 距離に応じて適切な詳細度を選択
Harmonyシステム:
SLIMの中核となるのが「Harmony」という動的リソース管理システムです。各フレームでユーザーのデバイスリソース(メモリ、GPU/CPU負荷、ネットワーク帯域幅)を監視し、最適なインスタンスとアセットを動的に選択します。
3つのレンダリング領域:
| 領域 | インスタンス | レンダリング | 用途 |
|---|---|---|---|
| HH領域 | 高品質 | 高品質 | プレイヤーの近距離 |
| HL領域 | 高品質 | 軽量 | 中距離(遷移ゾーン) |
| LL領域 | 軽量 | 軽量 | 遠距離 |
実際の効果:
テスト例では以下の削減効果が確認されています:
- データモデルインスタンス:159,745 → 92,536
- 三角形数:20M → 3.35M
使用方法:
- Team Createを有効化
StreamingEnabledをオンに設定- 対象モデルの
LevelOfDetailプロパティをSLIMに設定
現在の制限事項:
- 静的メッシュのみ対応(アニメーションメッシュは非対応)
- PC/Macのクライアントベータのみ
- 他プラットフォームではSLIM設定モデルが非表示になる場合あり
広大なオープンワールドや大量のオブジェクトを配置するエクスペリエンスでは、パフォーマンスと視覚品質の両立に大きく貢献する技術です。
適応アニメーション(Adaptive Animation)ベータ版
異なるリグタイプ間でアニメーションを共有できる画期的な新機能「適応アニメーション」がStudioベータとして登場しました。
HumanoidRigDescription(HRD)とは:
HRDは「カスタムキャラクターのスケルトンと標準R15ボディ間の翻訳層」として機能する新しいシステムです。これにより、異なるリグ構造を持つキャラクター間でアニメーションの互換性が実現されます。
主な機能:
-
自動互換性設定
- Studioの3Dインポーターがカスタムリグをインポートする際、自動的にHRDを生成
- ジョイント階層、命名規則、空間レイアウトを分析してヒューマノイド構造を判定
-
精密編集機能
- エクスプローラーでHRDインスタンスを選択して編集可能
- ジョイントマッピングの修正
- T-ポーズの調整
- ジョイントボリュームと可動域の編集
リグ分類:
インポート時に以下の3種類に自動分類されます:
| 分類 | 説明 |
|---|---|
| R6 | 標準R6リグ(変更なし) |
| Humanoid (R15) | 自動マッピング対応のカスタムリグ(10ジョイント以上検出) |
| Custom | マッピング失敗時の分類 |
メリット:
- プラットフォームアニメーション互換性:カスタムリグがR15アニメーションライブラリを利用可能
- ユニバーサル制作:カスタムリグで作成したアニメーションをR6/R15キャラクターで再生可能
- ランタイム無負荷:既存機能に影響せず、パフォーマンスコストなし>
これまでキャラクターごとに別々のアニメーションを用意していた開発者にとって、大幅な工数削減が期待できます。
日本市場での大きな動き
Roblox Creator Series in Tokyo 2025
Roblox初となる日本開催のクリエイターイベントが開催されました。日本のクリエイター、ゲーム開発者、インフルエンサーが一堂に会し、大きな盛り上がりを見せました。
登壇者:
- 羽柴健太氏(タカラトミー):『BEYBLADE X』について
- 田中創一朗氏(GeekOut株式会社)
- Jandel氏:『Grow a Garden』クリエイター
- サプライズゲスト:HIKAKIN氏
日本市場の急成長
イベントで発表された「日本版ロブロックス経済効果年次報告書」によると、日本市場は驚異的な成長を遂げています:
| 指標 | 成長率(2022Q4→2024Q4) |
|---|---|
| DevEx資格クリエイター数 | 415%増 |
| 日本国内DAU | 120%増 |
| 収益分配総額 | 78%増 |
日本市場はRobloxにとって最も成長著しい地域の1つとなっており、日本人クリエイターにとって大きなチャンスが広がっています。
クリエイター収益の改善
DevExレート引き上げ
RDC 2025で発表された通り、8年ぶりにDevEx(Developer Exchange)レートが平均8.5%引き上げられました。これにより、クリエイターコミュニティ全体で追加9,500万ドルが分配される見込みです。
同じRobux収益でも、より多くの現金を受け取れるようになったため、クリエイターのモチベーション向上につながります。
Live Creator Tournament
賞金総額$50,000のクリエイター向け大会が開始されました。開発スキルに自信のある方は、ぜひチャレンジしてみてください。
セキュリティ強化:年齢確認システムの拡大
Robloxは安全性向上のため、年齢確認システムを大幅に拡大しています。
対象となる機能:
- チャット機能
- Studio Team Create
- 外部リンクの利用
年齢グループによるコミュニケーション制限:
子供の発達の専門家と連携し、適切な年齢グループを定義。大人と未成年間のコミュニケーションに制限が設けられます。
展開状況:
- オーストラリア、ニュージーランド、オランダで先行導入
- グローバル展開を順次予定
開発者としても、年齢に応じたコンテンツ設計を意識することが重要です。特にソーシャル機能を含むエクスペリエンスでは、年齢制限の影響を考慮した設計が求められます。
まとめ
2025年12月のRobloxアップデートは、開発者にとって非常に充実した内容となりました。
今月の注目ポイント:
-
監視・分析ツールの充実
- HttpService監視ダッシュボードで外部API通信を可視化
- パフォーマンス問題の特定が容易に
-
開発効率化ツール
- StudioTestServiceでテスト自動化
- ReflectionServiceでメタプログラミング強化
- Open Cloud API拡張で外部ツール連携が容易に
-
パフォーマンス・品質向上
- SLIMで遠距離オブジェクトの描画を最適化
- 適応アニメーションでアセット管理が効率化
-
日本市場の急成長
- DevEx資格クリエイター415%増
- 初の日本開催イベント成功
-
収益面の改善
- DevExレート8.5%アップ
- $50,000規模のクリエイター大会開始
これらの新機能を活用して、より良いエクスペリエンスを作っていきましょう!
参考リンク
公開日: 2025年12月6日